その、フロアに響く愛らしい声は(ケータイ小説よりちょう甘いです)

糞まみれの美しさを i love perfume
この点どう打開するか、方法は多々ある。若輩者の戯言ではあるが提示する。まずシングル発売と同時にアナログ発売をするのは当たり前。「Polyrhythm」にインストがついたように(これはアレしてアレしろというお達しですね!)、アナログにもインストとアカペラを収録する。そのアナログを海外に流す。ブートでもメジャーでもどちらでも。

ここからが重要。海外のテクノアーティストにリミックスをさせる。アナログシーンでオリジナルがヒットする要因は一緒に収録されているリミックスが収録されていることが多い。特にインストは弄びやすいし海外のテクノアーティストが気に入る要素も多いと思うので、この方法でフロアライクなリミックスと同時に中毒性のあるオリジナルにずるずると引きずり込めばまず間違いないはずだ(現時点で最も頼んでみたいリミキサーがFunk D'VoidとTechnasia)。これにより世界は3人の歌声で覆われるのだ!

これはperfumeが本気で世界を狙うならばの話だ。だが、私は見たい。Derrick Mayが「Electro World」を流すところを!Theo Parrishがディスコマナーに則って「Chocolate Disco」を流すのを!Jeff Millsがスクラッチに物を言わせてリズムリズム言わせちゃってるところを!君は見たくないか!そうか!見たいか!

 俺は困惑していた。手には覚えのないホワイト盤が…いやマジックで乱暴に"Perfume/Polyrhythm"とレーベルに書き込まれたそれを手にして困惑していた。7時間に及ぶビートとグルーヴによる旅を終え、音が止まった今もなお歓声が響くフロアで、今までついてきてくれた客のために最後の一曲を…使い慣れたあの盤を取り出そうとしたとき、見慣れないホワイト盤が入っているのを見て思わず取り出した。「はて…こんなの買ったり貰ったりしたかなあ、ここ数年は酒すら飲んでないから記憶は鮮明なはずなんだが…」しばらく想いをめぐらしていたら思い出した。以前付き合っていた日本人の彼女に貰ったのだった。

 彼女は「ハイテクとアニメの国日本」という意識しか持たなかった俺を驚かせる様なものばかり聴かせてくれた。思い返せば…MELT-BANANAのハードコアな一撃必殺。Boom Boom Satellitesはこっちでもよく聴いていたがある日のトランシーなセットのライブはヤバかった。日本語の意味は解らないけどTHA BLUE HERBは聴いて数日は頭から離れなかった。公園でECDの「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」をかけて皆で大騒ぎしてから彼(ECD)はCRASSよりアナーキーだなあと思った。そしてモーニング娘。…。そんな或る日彼女が「こんなんあるけど」と言いながら持ってきたのがPerfumeのCDだった。聴いて一発で虜になった。特に「Electro World」は…DJを始めたころの自分に戻ったような気分になったものだった。しかし、いざ使おうとするにはいささか繋ぎにくいのも事実だった。でも俺はなんとかしてこれを使おうと努力した。盛り上げようとして外したこともあった。が、いつしか毒にも薬にもなる俺専用最終兵器として使いこなせるようになっていた。しかし彼女と俺の関係は唐突に終わりを告げた…俺の不用意な一言が原因で…1枚のホワイト盤を投げ出して。思い出した、俺が今手にしているそれは彼女が残していったものだった。それ以来Perfumeの曲自体使わなくなった。その盤の存在すら忘れた。その後忙しくなったせいか日々の記憶にも残らなくなった。

 もう一人の俺は「そのホワイト盤に刻まれたシットを使うんだ」と叫んでいた。しかし曲名も覚えがない、そして針を落とした形跡が一切ない、つまり俺はこの曲について何も知らないのだった。使い慣れたアレでいくか…それとも…。少し悩んだが俺はそれを取り出しターンテーブルに載せた。幸いブレイクの部分らしき所は溝の切り方が見た目にも変わっていた。すぐチェックできそうだ。素早くヘッドホンで飛ばしながら聴いていく、いける、これならいける、いいやこれでやっちまえ。マイク引っつかんで叫んだ「待たせたな! メイクサムファッキンノ〜イズ」。硬質かつ重いキックが鳴り始める。ややあって3人の愛らしい声がフロアに響く。クラウドが両手を上げ歓声で応える。キックとベースラインがフロアを震わせる。よし今日はいい日だった。

 いつしか俺は客と一緒に踊っていた。もうちょい尺が欲しいなあ、もうちょいローを出しても良かったかと思っていたらこのPerfumeの盤をくれた彼女が微笑んでいた。思わず近寄った。別れた時のような険悪な空気はもうなかった。
 「やっと思い出してくれたのね」
 「うん」。彼女に近づき、抱きしめて囁いた。
 「実は言いたい事があるんだ、ずっと言えなかった」
 「何よ?」
 「ごめん、俺が悪かった」
 その晩を境にPerfumeの名はヨーロッパのクラブシーンで知られるようになり、特に「Electro World」は10年以上に渡って新しいバージョンが作り続けられるアンセム中のアンセムになったわけだがそれはまた別の話。あの2人がどうなったかって?いやー知らんなあそれは。